Blog
ドアの修復時に思う事
ドアの修復について、お話し してみたいと思います。
伊藤リペアーでは室内ドアの修復依頼も多くあります。
どんな内容かというと、「ドアに穴が空いてしまった」というものです。
ドアに穴が空いてしまう主な原因は、
〇物がぶつかった 〇喧嘩などで蹴った。パンチした。が多いようです。
まあ、ほとんどがこの二つのケースに当てはまるでしょう。
建築現場などでは、取っ手 などの部品を取り付ける時に、穴の位置を間違えて開けてしまったというケースもあります。
これらのケースは、意図せずに起きた破損と、故意に起こした破損の二つに分類出来ますが、今回、故意に破損させるケースについて考えてみたいと思います。
誰もが、自分の人生や住空間について快適であるのが理想だとお考えでしょう。そこに何らかの波乱が起きて、つい、身近にあった壁やドアに怒りをぶつけてしまう….
ドアが割れてから「しまった」と後悔する。後悔しなくても、家族の方が、「大変だ。どうしよう。」と慌てだす。「こんな穴を空けてどうするんた!」と叱られるかも知れません。
そんな時は、穴の空いたドアや壁に感謝しましょう。あなたは大変運が良かった。何故なら、誰も病院について調べていないからです。
そうです。貴方は怪我をせずにドアを破壊することが出来たのです。
大怪我をしていれば、病院が優先ですよね。貴方の怒りはドアが受け止めて壊れてくれたのです。
しかし、運悪く怪我をすることもありますので、次にパンチするときは冷静になってドアの構造についてよく考え、見えない内部構造をよく見極めて強度の弱い場所を狙う必要があります。ちょっと罰当たりな考えですが。
ドアをよく理解して弱点に対してパンチした場合、衝撃を受けたドアの板が壊れて力を解放してくれます。
しかし、強度のある “芯材” がある場所にパンチすると、ドアは衝撃に耐えてパンチした本人に力が跳ね返ってきます。
結果、ドアは上手く割れず、人が怪我をする危険が高くなるのです。
破損状態の確認時、ひび割れがほぼ水平に走っているケースを見かけることがあります。
ちょっとヒヤッとする場面です。「危なかったな」という感じです。
何が危ないかというと、
水平のヒビ割れは、ドア枠の芯材に沿って板が割れた事を意味する場合も多く、
少し位置が芯材側にずれてパンチしていたら、木の角材めがけてパンチすることになり、怪我をしてしまう危険が高くなるのです。
いずれにしても、直接パンチしたりキックしたりするのは、怪我の危険性がありますので、止めておきましょう。
しかし、起きてしまったことは元に戻せません。お怪我がなければ幸い。軽傷であれば、一日も早いご回復をお祈り致します。
ドアについては、自然治癒いたしませんので修復いたします。
皆様が早く快適な生活を取り戻せることを願っております。
ドアの構造について
ドア修復の事について前回、記述しましたので、今回は、ドアの構造についてお話しをしようと思います。
室内ドアの中身はどうなっているの?
ドアに穴が空いて、初めて中が空洞だった事に気付く方も多いのではないでしょうか。
全てのドアが空洞になっている訳ではありませんが、穴が空いた場合はフラッシュ構造という作りになっている場合が多いと思います。
ドアの板は一枚板で出来ているものは希少で、ほとんどは複数の部材を組み合わせて作られています。
無垢材のドアは、木枠( 口 や 日 の形をイメージして下さい。框組み といいます)の真中に、板(鏡板といいます)がはめ込まれているものが多くあります。穴があくことはまずありません。傷は当然つきます。
木製ドアの主流になっているフラッシュ構造は、枠( 口 や 日 の形をイメージして下さい)の表裏両面に化粧板を貼り付けて 平らな(フラッシュ)ドア板に仕上げたものです。中が空洞なため、衝撃が加わると穴があきます。
空洞部には、補強用のコアといわれる部材が入っている物もあり、コアの種類は形・大きさ 様々です。いずれにしても、
耐衝撃性能を高めるためというよりは、歪み防止の意味合いが大きいため、衝撃により穴があくことがあります。
ハニカム(蜂の巣の形をイメージして下さい)コア が主体になったボードもあります。
内部がびっしりとコアで埋め尽くされ、ハニカムボードと呼ばれています。軽くて丈夫です。しかし穴はあきます。
これらの構造で表面に貼られている化粧板は、合板や、木の繊維を板状に固めたMDFという材が使われることも多く、これらの板に、印刷したシートや 木を薄くスライスした "突き板” などが貼られて仕上げられています。
この化粧板が割れてしまうため、「ドアに穴があいた!」という事態になります。
修復時は、この化粧板を相手に色・形の再現をしていきます。損傷部の修復面と、健全な周囲の部分ができるだけ一体化するように接合する必要があり、着色工程以上の時間を掛ける場合もあります。
ドアの穴をどのように修復しているのか
広く普及しているフラッシュドアですが、このドアに穴があいた場合、破損した化粧板を修繕する事になります。
修復士は、この化粧板を相手に色・形の再現をしていきます。
完成した修復面は、健全な周囲の部分と一体化している必要があります。
割れて一体性が損なわれたものを完全に元に戻すには、時間を戻すしかないのですが、出来るだけ一体化した状態に近づけるのが修復の技術です。
直し方について
割れた化粧板はどのように修復するのか
遺跡から発掘した土器の破片を貼り合わせて復元するのと同じように、割れたドアの破片を補強しながら組み合わせて元の場所に貼り合わせる事があります。
新たに用意した板を穴の形に切り出して表面材とする事も多いのですが、同じ素材を出来るだけ活かして再利用した方が一体化に近づけるからです。
ドアに限らず、建材は温度や湿度の影響で膨張・収縮を繰り返しています。
元の素材と異なる素材でリペアすると、この収縮率の違いで場合によっては後から問題が起きることもあります。その為に元の素材を出来るだけ活かそうとするのです。
この方法は、理想的に思われます。しかし、損傷した破片を補強して接合するのは大変な手間と時間が必要で、時には、「最初からパテ埋めした方が、早くて安定した修復面が出来ていたな。」となる事さえあります。
木質系の材料は、割れた部分同士を合わせても、ささくれ立っていたり、曲がっていたりするため、単純に接着剤でくっつけただけでは歪みのある板になってしまうのです。
その為、大きめの破片は再利用をし、品質が不安定になりがちな小さな破片や、歪んだ破片は、再利用を諦める事も多くあります。
以上のように、全く同じ素材のみで復元することは実際には出来ないのですが、
修復士は 問題が出来るだけ起きないように施工計画を考えて作業しています。
次回に続く
割れた化粧板の修復
割れた化粧板の修復
割れた化粧板を復元する方法について前回お話ししました。
今回は、その続きです。
ドアの割れ方は、
①ぽっかりと穴があいてしまった。
②ヒビ割れて板が歪んでしまった。
③穴の周辺もヒビ割れが広がっている( ①+② )。
以上のとおり分類出来ます。
①割れて外れてしまった化粧板については、破片があれば前回の手順で復元を試みます。
破片のつなぎ合わせをする前には重要な工程があります。
フラッシュドアは中が空洞なので、そのままでは板を貼り付けることが出来ません。
添付写真は穴を塞いだ場面のものですが、
ドアの化粧板の裏側に、穴を塞ぐ為の板が入っています。
〇塞ぎ板を化粧板の裏側に固定する方法
簡易的な方法は、
接着剤で板を貼り付けます。
メリット 技術を必要とせず簡単に塞ぐことが出来る・短時間で作業できる・費用も安くなる。
デメリット この方法は板の裏に支えがないため、強度の不安が残ります。
再び、物が当たったり、押した場合に板が外れる恐れがあります。
本格的な方法は、
塞ぎ板の支え(コア)を取り付けてから、穴を塞ぐ方法です。
メリット 安定した強度 板の裏に支えがあるため、押しても塞ぎ板が外れる心配を解消できます。
コアは軽量なため、ドアにかかる負荷を気にせず強度を得ることが出来ます。
デメリット 作業が複雑になり、時間がかかります。費用も高くなります。
修復士は、費用・時間・完成度に対する要求などを総合的に考えて修復プランを考えます。